オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

2011-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ミューズの神が宿る時2  スクランブルド・エッグ(後)

自分の曲であるか、疑心暗鬼であったポールは周囲の仲間に曲を聞かせて尋ねてみた。「このメロディーを知っているかい?」 しかし、答えは誰に聞いても「NO」であった。あまりにもきれいな曲であることから、自作曲であることに自信がもってなかったポール…

ミューズの神が宿る時2  スクランブルド・エッグ(前)

夢の中で、この上もなく甘美な世界が広がっていようとも、目覚めと同時にそのいつまでも浸っていたい時間は、無情にも消え去ってしまう。そして、ほとんどの場合、記憶にさえ残らない。 ポールだって、そんなことは百も承知だった。でも、その日の夢で聞こえ…

ミューズの神が宿る時1 子守歌(後)

彼女の出産に際し「子守歌」を送ろうと思いついたヨハネスに、まず彼女が昔歌ってくれたワルツを伴奏部におくアイディアが出てきた。 さて、問題は肝心な旋律である。懐かしさと愛しさが、食道から喉元を甘く暖かいものがこみ上げるように溢れ出していた。「…

ミューズの神が宿る時1 子守歌(前)

「ベルタ」、それは、ヨハネスにとって、なつかしさがこみ上げてくる名前だった。実業家の元に嫁した彼女が次男を出産したというニュースが伝わってきたのだ。 そう彼女との出会いは、もう10年も昔に遡るだろうか?ニ短調ピアノ協奏曲の評価が一向に芳しく…