歴史
門脇禎二「吉備の古代史」を読む2 吉備国が星川王子の変や蝦夷への対応でゴタゴタしていた後、大和側もゴタゴタが続き、結局は継体天皇を招くことになる。大和側の混乱期は吉備が勢力を立て直す好機だったのでしょうが、結果的には大和に制圧されてしまいま…
門脇禎二「吉備の古代史」を読む1 吉備津彦という神様がいらっしゃる。 伝説の範囲ですが、大和から派遣された神 孝霊天皇の皇子イサセリヒコノミコト(=吉備津彦)が温羅(ウラ)を退治したことが桃太郎のモデルだという説がある。推量ですが、この地方に一大抵…
加藤九祚「シルクロードの古代都市」を読む 著者は、まず研究対象としている地域について解説を始める。この説明がなければ、どこのことやらわからないくらいボクには馴染みのない地域なのだ。アム・ダリア川という総延長2500kmの大河がパミール高原からアラ…
阿刀田高「コーランを知っていますか」を読む2 マホメットは、預言者であると同時に政治家であり軍人でもあった。彼は敵対する勢力と戦い、信仰を広めていった。 ところが戦闘が起きるとおびただしい数の子どもと女性が、孤児と寡婦になってしまう。実は経緯…
阿刀田高「コーランを知っていますか」を読む1 ボクの身近にムスリムの方がいたのは、国際理解教室の講師の方が職員室にいらした時くらいで、小学校は給食だから講師の先生は信仰に配慮した献立になっていた(具体的には豚肉厳禁)。生まれてこの方ずっと日本…
安倍雅史「謎の海洋王国ディルムン」を読む。 世界史の授業では、初めの方で古代遺跡の名前が次々に登場する。現代に至るまでその痕跡をとどめているピラミッドのような観光地を除けば、遺跡のほとんどは掘り起こされたものだ。けれど、誰もが知っている遺跡…
橋本公誠「イブン・ハルドゥーン」をkindleで読む2 歴史を教えるという行為は、単に年代を追いながら記録された事実を羅列していくことではない。それは歴史の外面に過ぎず、何が原因でそのように時代が変わっていったのか、内面をとらえなければならないと…
橋本公誠「イブン・ハルドゥーン」をkindleで読む1 イスラムの歴史が世界史の授業でメインストリートとして案内されないのか、その答えはハルドゥーンの生涯を追いかけている本書から明らかになってくる。北アフリカとスペイン南部を中心に展開した王朝は、…
宮田律「中東 迷走の百年史」を読む 私たちは、近代国家を支える一員として国と社会契約を結んでいるはずだし、主権国家とはそういう概念なのだという西洋的発想が脳に刷り込まれている。 しかしながら、アラブ世界の人々は容易に国境を跨ぎ越し、政治的信条…
後藤明「ムハンマド時代のアラブ社会」を読む 本書の前半は、当時のアラビア半島において部族・氏族がどのように形成されていたのかを解説している。個人名が先に来て、続く名前は父祖の名前なのですね。 ほとんどが砂漠に覆われているこの土地は、建前上は…
武田幸男、宮嶋博史、馬渕貞利「朝鮮」を読む 1993年、今から30年以上前に書かれた本でありますが、古臭さをあまり感じないのは歴史書の強みでしょうか。 中国史の登場人物は、もちろん漢字で名前が表記されているのですが、その発音は日本の音読みです。例…
半藤一利「墨子よみがえる」を読む 漢籍にある程度通じていることが、教養人としての嗜みであった時代があったし、今もその伝統は続いているはず。本書前半では、漱石門下の墨子に対する見識の浅さを冷かしている。著者は漱石の遠い縁者なので、この程度の暴…
青野太潮「パウロ 十字架の使徒」を読む2 十字架。ロザリオの先端に、クリスマスツリーに、そしてもちろん教会で私たちは十字架を見ている。本書の副題、十字架の使徒とは何か? 「殺害されたままの状態のキリスト」こそが、同時に「神の栄光」の体現者であ…
杉崎泰一郎「修道院の歴史」を読む2 最初の修道士は250年頃にエジプトで生まれたアントニオスです。彼は隠遁生活を送りながら修行を続け、人々へ病気の治療や説教を行いました。まだキリスト教が迫害を受けていた時代のことでした。始めは単独だったのです。…
杉崎泰一郎「修道院の歴史」を読む1 有名なミュージカル「サウンド オブ ミュージック」や「天使にラブソングを」には、修道女が登場する。そして修道院の厳しい戒律に馴染まない女性や身を隠すためにやってきた女性が主人公なのだ。 そもそも厳しい戒律とは…
祝田秀全「建築から世界史を読む方法」を読む2 ロマネスク建築の傑作として本書に登場するのが、斜塔で有名ならピサの大聖堂。著者は世界史の先生だから、建築当時の社会背景など解説されていることがありがたい。この聖堂はピサの艦隊がイスラームの艦隊に…
祝田秀全「建築から世界史を読む方法」を読む1 世界史のテキストには、建築様式の移り変わりが記載されている。ビザンツ様式→ロマネスク様式→ゴシック様式という具合。 でもビザンツの前に、すばらしい建築群を残した帝国を私たちは知っている。その名はロー…
渡辺信一郎「中華の成立 唐代まで」を読む3 始皇帝が始めたことは実に広範に及ぶが、国内の幹線道路網および駅伝制を整備した実績も大きい。人・物の移動がスムーズならば経済は発展していくのだから。 本書は続いて、漢の領土を広げて大帝国を築いた武帝と…
渡辺信一郎「中華の成立 唐代まで」を読む2 国内の民を戸籍に登録して管理する。登録したら租税・軍役を課して国を強くする。その戸籍を最初に作った人が秦国の商鞅でした。実際、秦国は最強の国となり、やがて始皇帝の時代を迎えるのです。 それまでの血縁…
渡辺信一郎「中華の成立 唐代まで」を読む1 お江戸コラリアーずで組曲「ハレー彗星独白」の「弥生人よ きみらはどうして」という歌を歌った。大岡信さんの詩に、吉野ヶ里遺跡を思わせる集落が描かれている。周囲に塀や堀を巡らした村の原型は、中国古代、殷…
草野友子「墨子」を読む 非攻。墨子は侵略戦争を大量殺人と位置付け、なぜこれが不義でないのかと主張します。そして実際に戦闘集団を組織して、大国から攻撃を受けている弱小国の救援にあたるのです。実際にどのようにして城を守ればよいのか、その具体的な…
田丸ようすけ 漫画「竜樹」をKindleで読む 仏教に取材した漫画と言えば、手塚治虫の「ブッダ」を読んで以来になります。手塚治虫は様々なエピソードを元に彼一流の脚色を施していますが、本書も架空の人物を恋人役や弟子として配置するなど、劇画としての演…
色摩力夫「アメリゴ・ヴェスプッチ」を読む。 なぜ、彼についてちゃんと学んでいないのか、本書の冒頭で明らかにされている。彼の業績に関する資料が少ないのだ。けれど明らかなのは彼の親友であるコロンブスが野心に満ちた航海者であったのに比べ、ヴェスプ…
原田恒弘編「群馬歴史散歩 173号」を読む。 飯尾宗祇 いのちあらばまたもきてみむ草津なる 神のいでゆはあやにかしこき 草津温泉は有名な観光地であるし、ボク自身もリピーターを自負しています。そこで本書からは、今までボクが知らなかったことのみを抜き…
エリック・ルーセル著、山口俊章・山口俊洋訳「ドゴール」を読む2 チャーチルにファシスト・独裁者的な雰囲気を指摘されているドゴールは、ソ連とも接触しつつ共産主義者が大勢いるレジスタンスを鼓舞しなければならなかった。戦後壊滅的な被害を受けたフラ…
エリック・ルーセル著、山口俊章・山口俊洋訳「ドゴール」を読む1 愛国主義って何だろう。ドゴール伝を読み進めながらこの問いについてボクなりに考えてみたい。 ドゴールのゴールとはガリアの意味があると言う。カエサルの戦記にあるように現在のフランスは…
高遠弘美「物語 パリの歴史」を読む2 本書の中でも、かなりの分量を割いて書かれているのが、フランス革命とその後のナポレオン。思い出せばフランス革命を「やばい」と感じた周辺国がちょっかいを出そうとして、逆にナポレオンに攻められてしまったのでした…
高遠弘美「物語 パリの歴史」を読む1 オヤジのあくび674でシャルルマーニュの本を読んだのですが、彼はエクス・ラ・シャペル(アーヘン)を中心に活動していたので、パリの話があまり出てこない。はて? ヴァイキング(ノルマン人)による侵攻からパリを守った人…
ロベール・フォルツ 大島誠編訳「シャルルマーニュの戴冠」を読む2 世界史のおさらいです。ローマにはカトリック教会の頂点に立つ教皇がいらっしゃる。一方ローマ帝国は、テオドシウス1世の時に皇帝がコンスタンティノープルに移り、ビザンツ帝国とか東ロー…
ロベール・フォルツ 大島誠編訳「シャルルマーニュの戴冠」を読む1 初めて習うものにとって、ドイツ語とフランス語は大きく異なっている。ドイツ語が西ゲルマン祖語から長い時間をかけてドイツに浸透して知ったのに対して、フランス語は、ざっくり俗ラテン語…