オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ぼくの大好きな一枚のアルバム 

 ポール・サイモンの話 2

「明日に架ける橋」の思い出

NHK紅白歌合戦でポールが「明日に架ける橋」を歌ったことがあるのをご記憶の方がいらっしゃるだろう。あの時は、発表当時の美しいピアノとオーケストラによるアレンジではなく、かなり趣の違うリズムアレンジを施した編曲で歌っていた。これがあの「明日に架ける橋」?と驚かれた方もいるだろう。でもそれこそがポールなのだ。毎度おなじみのワンパターンで十分通用するのにも関わらず、ちょっと今の自分らしさを出してしまう。音楽に対して絶えず新しい何かを求め続け、自分を変化させているポールの生き方には、まったく脱帽の一言だ。

 ところで、この「明日に架ける橋」については、もう一つ心に焼き付いている思い出がある。この曲がヒットした当時、油壺にある水族館に出かけたことがあった。たしか閉園間際までいたと思うが、まるで相模湾に落ちる夕日の色に音楽が吸い込まれていくかのように、水族館園内に「明日に架ける橋」が流れていたのだ。「何て美しい曲!」「何て美しい風景!」今でも鮮烈に思い出すことができるほどに、それらが同時に心に深く刻まれた。当時中学生だった私は、その曲の名を知らなかったのだが、その美しい曲が「明日に架ける橋」であったことを知るまでに大して時間はかからなかった。

 当時、ピアノにちょっとさわりたくなった少年達が人前で、鼻をひくつかせながらちょいちょいと弾いていたのが、この「明日に架ける橋」である。ビートルズの「レット イット ビー」を弾く仲間もいたのだが、そちらの方はポールマッカートニー同様、自分で歌わなければならなかったので、自分は独奏曲として成立している「明日に架ける橋」の方をよく弾いていた。恐らくは、すっかりいいおじさんになった今でも「明日に架ける橋」なら弾けるという人が、結構いるのではなかろうか?