オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ぼくの大好きなアルバム この一枚 ②

 ランディ・ニューマン「小さな犯罪者」

 売れ筋には、全然縁が無くて名前を出しても「だれ、それ?」と言うような反応しか返って来ないのだけれど、聴いてみると実にいい・・彼も、その例に漏れず日本人があまり知らないシンガーソングライターの一人なのかもしれない。それが証拠にと言うか、レコード屋はおろか大手レンタル店からも彼のアルバムを探すのは至難の業なのである。

 彼の名前は、ソロシンガーとしてよりも、映画音楽それも有名なアニメーション映画の作曲家として、むしろ名高い。「モンスターズ・インク」「トイ・ストーリー」に流れる音楽は、いずれも彼の手によるもので、彼は何とそれらの作業によってアカデミー賞まで受賞している。彼のおじであるアルフレッドやライオネルが、映画「慕情」の音楽によって、やはりアカデミー賞を受賞している履歴を、彼も辿っている。

彼のソロアルバムと言うと、まず「セイル・アウェイ」を推す人が大勢いる。「船出せよ」という威勢のいいアルバムタイトルなのだが、その詞の内容を読むと奴隷売買によって繁栄を遂げてきたアメリカの暗い歴史をえぐり出していることが、すぐわかる。大概の聴き手は、いきなり頬にジャブパンチを浴びせられたボクサーのように愕然としてしまうだろう。そう彼の詞には、毒が含まれているのだ。それもかなり濃い目の。

人々は、音楽に多くの場合「甘さ」や「辛さ」を求めている。それがある時には、身もとろけるような愛の音楽であったり、権力に対する抵抗であったり、いずれにせよそれらへの共感が、音楽に多くの聴き手を引き寄せているのであり、初めからとても食べられないような「毒」は、そもそもポピュラー音楽としては成立しがたいものなのだ。

 しかし、ランディは歌う。聴き手に「かなりの毒」を浴びせながら。