オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ぼくの大好きなアルバム この一枚 2

「小さな犯罪者」というアルバムについて 2

 五曲目は「ジョリー・コッパー・オン・パレード」。コッパーは、ロボコップのコップと同じで警察官のこと。幼子が警官のパレードを見て感激し、警察官にあこがれる無邪気な気持ちを歌っている。次の一節を除いては・・・Now they're doin' tricks for the children (彼らがやっていることは、つまり子どもをだましているってことさ)無邪気にパレードにはしゃぐ子どもの心を歌っていても、ランディは彼一流の皮肉を決して忘れない。

 続いて六曲目「戦争前のドイツ」が歌われる。曲想は、再び美しいオーケストレーションの中にも、今度は戦争が迫った時代背景を暗示するかのように悲しく暗い響きを伴って、出現する。登場人物は Thinking of the sea 海のことを思い続けるのだが、この旋律の切なさは、いったい何だろう?1935年から後に、ドイツで起きた数多くの悲劇について、具体的な史実をランディは何も語っていない。しかし、それを聴き手の多くが知っているという前提で、悲しみが限りなく切なく歌われるのだ。

 七曲目もオーケストラを伴った曲だが、曲名からして不思議だ。「ジークムント・フロイトによるアメリカのアルベルト・アインシュタインの物まね」。二人とも二十世紀を代表する科学者でユダヤ人だが、亡命先で亡くなったフロイトが、アメリカに渡ることができたアインシュタインに対して、アメリカへのあこがれを込めて、物まねをしていると、とらえるのがよいのだろう。この曲もそうだが、ランディの曲にはそこに描かれた景色について、ある程度時代背景を知らなければ「何言っちゃってんの?」と「意味不明」に陥ってしまう曲がある。
 America America God shed his grace on Thee と歌い上げるサビが素敵な曲だ。

 八曲目は「ボルチモア」。「住みにくい街だよ、ボルチモアは。」と繰り返し歌ってしまうのだが、ボルチモアに住む人は、この曲にどう考えても好感をいだかないだろう。筆者は、実際にボルチモアを訪れたことがないので、これ以上のコメントは差し控えたいが・・。