オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

「さくら」を愛で、「さくら」を歌う。 1

 今月4月5日、満開の桜を観に、妻と連れだって散歩に出かけた。

すぐ近くの学園にこっそり入らせていただく。ここは、正門から校舎まで続く坂道の桜並木が素晴らしい。そばで陸上部の生徒さんがこの坂道を使って、繰り返し時間を測りながらトレーニングを続けている。私たちのような近所のあじさん、おばさんが好き勝手に桜の写真などを撮っていても、脇目もふらずに練習に集中している若者の姿が、また素晴らしい。

 学園の坂を越えて、山一つ向こうの川沿いを歩く。ここ数年、川沿いに歩く遊歩道が整備されており、気持ちのよい散歩を楽しむことができる。早速望遠カメラを構えたカメラマンの列に出くわすが、野鳥の姿でも追いかけている方々なのだろうか?

 しばらく歩き、境内に美しい桜が見える寺に立ち寄ってみた。鎌倉の鬼門方向にあたるこの地域に鎌倉幕府鎮護のために、また石橋山の戦いで頼朝公の身代わりとなった武士を弔う寺として建立された、八百年以上の歴史がある由緒ある寺ということだ。境内に足を進めると、般若心経を唱える声が聞こえてくる。その方向を見ると、夫婦で連れ立って弘法大師像に向かって経を唱えているのだ。どうやら四国八十八ヶ所を回ったのと同じ御利益がある一角で、周りには阿波、土佐、伊予、讃岐に及ぶ八十八ヶ所の霊場の名前が刻まれていた。私たちもそっと手を合わせて去る。

 川沿いをまた進むと、紅と白の桜が幾本も植えられ、そのコントラストが実に鮮やかなので、しばらく眺めていると、植え込みの向こうから家の主が現れ「ここまで育てるのに二十年かかりました。」と苦労話を語られる。桜の美しさを楽しませていただいた旨、礼を述べる。

 国旗や国歌に異論を述べても、日本の国を代表する花が「桜」であることや日本を代表する山が「富士」であることに反対する人は、まずいないだろう。言うまでもなくこの国の人々は「さくら」の花が大好きで「霊峰富士」を仰ぎながら生活してきたのである。だから上空をミサイルなのか人工衛星なのか、わからない意味不明の飛翔体が通過していても、しっかり日本の春を彩る桜を観に出かけているのである。

「さくら」の美しさは、心の一番やわらかな部分を刺激する。解放された人々の感性は詩や歌となって、言葉として歌として口からほとばしり、やがて音楽となった。

 古くは、日本古謡からコブクロまで、「さくら」を歌った名曲について、思うところを綴ってみたい。