オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ほいほいおじさんとハードロックを聴こう 2

忌野清四郎の追悼エッセイや三木たかし先生のことを書いていたので、ハードロックの話が後回しになってしまいました。本日から復活します!

何はなくとも、レッド・ツェッペリン

ツェッペリンを聴きたいのですが、どれから聴けばよいですか?」この質問は、難しい。ビートルズなら、最初からサージェント・ペパーズを聴くか、リボルバーラバー・ソウルビートルズ色に少し染まってから聴く方法を勧められるだろうけれど、ツェッペリンは、デビューアルバムと二作目がハードロックの王道を行くような作品で(むろん評価は高い)、三作目に突然雰囲気をがらりと変えたため、二作目の延長を期待していた批評家にこてんぱんに酷評された後、名作の誉れ高い四作目を発表する。さらにセールスは芳しくなかったようだが、活動後期にも「プレゼンス」という凄いハードロックが聞こえてくるアルバムを出している。その他のスタジオ録音によるアルバム「聖なる館」や「フィジカル・グラフィティー」も彼等の音楽性の広さをいかんなく表現しており、どれから聴けばよいなどと、恐れ多くて軽々しく口にすることはできない。もし一枚しか聴いていない人がいたのなら、それは、ベートーベンの交響曲を九曲全部聴かずに「運命」だけを聴いて、満足してしまった人に(そんな人がいるのか、知らないけれど)似ている。

 ただし、ハードロックの本家としてツェッペリンの「足跡」を語ろうとするならば、自ずと話の順番は決まってくる。衝撃的という言葉が、使われ過ぎてすり切れてしまっているほどのインパクトをもって登場したデビューアルバムから話を始めなければならない。

ツェッペリンのレコード作りには、いくつかの特徴がある。まず、デビューアルバムから4作目に至るまで「アルバムのタイトルがない!」ということだ。内容を象徴するタイトルをつけ、アルバムにトータルなイメージを持たせるのが一般的だった当時(それは今でも同じだろうが)、アルバムにタイトルがついてないのは、異彩を放っている。4作目に至っては、「何とグループ名さえも、記載されていない!書いてあるのは、裏面に収録されている曲名が印刷されているだけである。」

 では、アルバムの中身が散漫で、ちょっとできのいい曲の寄せ集めなのかと言えば、決してそうではない。ロックの歴史を彩るすべてのバンドの中で、デビュー当時から最高水準の演奏能力を誇り、且つこれだけ内容の濃いアルバムを作成し得たのは、後にも先にもレッド・ツェッペリンをおいて他にない。

 もう一つは、シングル盤の発売を極めて抑制しているということだ。日本ではデビュー盤から「グッドタイムズ・バッドタイムズ」を初めとして、かの有名な「移民の歌」など数多くのシングルカットが出されているので、違和感があるかもしれないが、彼等の本国イギリスでは、彼等が解散までに発売したシングル盤は、解散前年の「ホットドッグ」一枚きりである。
 
 1970年代当時、音楽を聴きたい若者は、アナログレコードが再生できるステレオセットで聴くしかなかった。さて肝心のレコードを買うにも、アルバムは当時の中高生の小遣いから比較するとかなり高価な買い物であり、ヒット曲が聴けるシングル盤があれば、まずそちらを聴いて十分にファンとしての助走期間を経験してから、アルバムを買うというのが一般的であったように思う。

 だから、アーティスト側も、まずアルバムからカットされたシングル盤でファンをつかみ、それから二作目、三作目のアルバム作りに取りかかっていたわけで、ツェッペリンのように本国でシングル盤をほとんど出していないにも関わらず、これだけの人気を保っていたのは、まったく驚嘆に値する。