レッド・ツェッペリンの快進撃!
ロックが好き、いや音楽が好きな若者であれば、誰しも、まるで熱病にでも浮かされたかのように、あるバンドや歌手に病みつきになった経験があるだろう。60年代であれば、ビートルズやストーンズ(言わずとしれたローリング・ストーンズのこと)、そして70年代であれば、今回の主人公であるレッド・ツェッペリンに。
そしてそれらのバンドは、いずれも多くの人々を惹きつけ、ファンを拡大再生産し続ける魅力が満載されたバンドであった。
レッド・ツェッペリンの場合、その魅力とはジミー・ペイジのつむぎ出すギターのリフ(その曲を支配する短い音型)やアドリブにおける驚異的なテクニックであり、ロバート・ブラントの『よくぞこんな声が出せるものだ』と誰もが、呆然とするばかりの超人的な声と歌唱力であり、ジョン・ポール・ジョーンズのバンドをしっかり支えるベースワークであるのだ。
おや、一人忘れてやしませんか?とお叱りの声が聞こえてきそうだが、実は、その一人こそがドラムの歴史に燦然とその名をとどめるボンゾことジョン・ボーナムである。一般にドラムの音と言えば「ドン・ドン」「タン・タン」と言った擬音で表現するが、ボンゾの叩く音は「ドバン・ドスン」とか「ダダン・ドカン」とか聞こえてくるのだ。「ドラムは、音楽の主役に合わせながらテンポを決め、全体のバランスに配慮して音を調整する楽器である。」という定義が、ボンゾのドラムには、まったく当てはまらないと言ってよい。
他の3人も、それぞれに超絶技巧の持ち主なのだが、結局グループ全体のノリを支配しているのは、ドラムのボンゾなのである。だから、ボンゾが急死して、グループが自然消滅してしまったのは実に肯ける話で、ボンゾのようなドラム叩きは、後にも先にも彼一人きりなのである。彼にしか表現できなかったタイム感やグルーブ感が、レッド・ツェッペリンの演奏を比類なきものにしていたのである。
さて、デビューアルバムに続く2枚目のアルバムも凄い!このアルバムは、彼等が超過密なスケジュールでコンサートを展開していた真っ直中に録音されたものだが、疲れ切って限界に達している肉体と精神が、逆にハイな状況を造り出したとしか思えない。極限に達したテンションの高さで演奏されている。
すでに名曲中の名曲だが「胸いっぱいの愛を(WHOLE LOTTA LOVE)」や「ハートブレイカー」。さらにそれに続いて間髪入れずに演奏されている「リヴィング・ラヴィング・メイド」など、これがハードロックなんだってば!と言わんばかりの演奏が繰り広げられる。とりわけジミー・ペイジのギターのリフは、一度聴いたら忘れられない旋律である。おそらくは、またあの音が聴きたくて・・あのリフが思い出されて・・一枚のレコードを何回も何十回も繰り返し、聴いていたファンが大勢いたことだろう。
実はツェッペリンの物語は、まだ始まったばかりなのである。三枚目のアルバムの話を、あまり一生懸命ハードロックしていないから・・という理由で、無理矢理飛ばしたとしても、その後にかの名曲「天国への階段」を含む四枚目のアルバム。そして音楽性をどんどん広げていった先に、ふと思い出して原点に戻ったようなアルバム「プレゼンス」そしてそこで聴かれる「アキレス最後の戦い」のものすごい迫力!と語りはじめれば、きりがないのだ。今回のエッセイは、ハードロックの登山口まで案内するガイドのようなものだから、ツェッペリンの壮大な物語については、また機会を改めてふれてみよう。