オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ピアニスト辻井伸行が描き出す世界 2

 彼の演奏に接する一番手っ取り早い方法は、HPにアクセスし、CDに収められた演奏のさわりだけを視聴することだが、むろんそれだけでは、演奏している曲の全体像はつかめない。次なる方法はCDを買い求めることで、例に漏れず私も「debut」を購入し、聴いてみた。

曲を通して聴かなければ「全体像がつかめない」と書いたが、試聴版やニュースなどでも彼の奏でる音色については、わかる。とにかく「明るく」しかも「粒が適切によくそろっている」のである。まるであたかも失われた視覚では、感じ取ることができない「明るさ」をピアノの音色で表現しているかのように。

 その「明るさ」が、ラヴェルの作品演奏(例えば「水の戯れ」)に要求される色彩感を必要十分に表出し、実に鮮やかに描ききっている。彼の演奏でドビュッシーを聴いてみたいと感じたのは、何も私だけではあるまい。

 彼の音色を聴いて、思い浮かんだピアニストが一人いる。アメリカのピアニスト「マレイ・ペライア」である。ペライアの弾く音の透明感・明るさが、辻井さんの弾くピアノと一脈通じ合うところがあるように感じたのである。ペライアは、モーツアルトを奏でながら、自分の音色の純化を図っていったけれど、辻井さんは、今後どのようなプランで自分の音楽世界を切り拓いて行くのだろう?

 個人的には、先程のドビュッシーの他、シューマンのロマンティシズムも辻井さんのピアノと相性がよさそうに感じているのだが・・・。