オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オペラ コレクション「カルメン」を買ってみる 3

 ドミンゴのホセ

 管弦楽を統率する指揮者の話を先にしてしまったが、言うまでもなくオペラは歌を楽しむ音楽である。だから主役の素晴らしい歌唱に惜しみない拍手を送るし、反対に期待していた歌手が不調に終わった場合は、遠慮ないブーイングが待ち受けている訳だ。

 タイトル・ロールのカルメン闘牛士エスカミーリョ、ホセの許嫁ミカエラと、ビゼーの叙情感たっぷりのアリアが全幕に散りばめられたオペラの中で、テノールの役どころと言えば、ご存知ホセである。そのホセをまだ三十歳台のドミンゴが歌っている。

 三大テノールの大看板を背負う少し前の声のつやに張りが、聴いていて実に心地よい。思えば、三大テノールとして市販されている録音も、ドミンゴに関して言えば、70年代の後半から80年代の前半のものが多く、このカルメンなどまさに絶頂期を迎えようとしていた声なのかもしれない。

 もともとがバリトンで、テノールに転向し、ワーグナーヴェルディの「オテロ」という超重量級の役からドニゼッティの「妙薬」のような軽い声を求められる役まで幅広く歌ったドミンゴだが、声の魅力と同時に端正な容姿を生かした演技力に秀でていることも書き忘れてはいけない。このカルメンでも、ホセという「存在そのものが葛藤する男」である役柄の心理をよく演じている。