8/29(土) 14:00 開演
戸塚混声合唱団第12回演奏会
横浜みなとみらいホール 大ホールにて 3
この日のメインディッシュは、フォレ(フォーレ)の「レクイエム」。音は決して難しくはないので音取りは比較的スムーズに進む。しかし音楽的にこの名曲を表現するのは並大抵のことではない。
名曲を演奏するという行為とは、作曲家が楽譜に書き残した音を再現することではなく、作曲家の音を素材にして自分たちの音楽をどう創り上げるかという課題と向き合うことなのである。余談だが「カフェ・オレ」「カフェ・オーレ」どちらの発音が耳に馴染みますか?最近では「カフェ・オレ」と表記するのが一般的だと感じているが、作曲家の名前もそれならばフォレなのである。未だにフォーレと表記するのはそろそろ卒業した方がよさそうである。
静謐さを湛え、気品が漂うコーラスとフォレの「レクイエム」は相性がよい。しかし、元来戸塚混声合唱団のカラーは、「元気いっぱい、八方破れ」に近いものである。筆者は、この合唱団の草創期に関わった経験を有するが、結成当時のこの合唱団は、練習の合間にお新香を食べていたのである(お新香を食べる合間に合唱もしていた?)。その身上はアット・ホームな雰囲気と何でも美味しそうな音楽は自分たちのレパートリーとして取り込んでしまう貪欲さにあった。だからオペラ合唱曲やモーツアルトの「レクイエム」を歌う傍らで、NHKみんなの歌でおなじみの「南の島のハメハメハ大王」などをレパートリーにしていたのである。(むろんこの節操のなさは、識者が眉をひそめるところであるが)
さて、この日は「リベラ・メ」の演奏がよかった。この曲を起伏ある表現に創り上げようとしている指揮者の棒さばきに、もうそろそろおとなしくはしていられない合唱団のエネルギーがシンクロし、情感がふつふつとわき上がってくるいい演奏ができあがっていた。拍手!
アンコールは、この前の演奏会の時もオケ伴で演奏していた「瑠璃色の地球」。松田聖子のヒット曲を声楽家のソロ+合唱団+オーケストラで演奏するとこんなにも広がりのある音楽に生まれ変わるということを示してくれた。これも好演!