オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ほいほい的音楽展望 3

 作曲という作業の限界に見切りをつけて、「演奏の時代」を宣言したのは、本エッセイにもたびたび登場している故福永陽一郎氏で、氏の著書「演奏の時代」が紀伊國屋書店から出版されたのが1978年のことだから、もうすでに30年以上の歳月が流れている。

 福永氏は、冒頭で次のように語る「進歩の終焉のあらわれとして、『作曲』という創造行為が意味を失いました。近代になって、作曲の様式や技法が、猛烈なスピードで進化した結果、伝達の手法が人間の感受能力の全容量を越えてしまったのです。1950年以後に作曲された音楽が、ごく僅かの例外ー一桁のパーセント以上ではないーはあるにしても、もはや普遍的な芸術作品としての存在理由も生命力も持たなくなったという事実を誰も否定できません。」

 陽ちゃんの筆は、相変わらず歯に衣をきせぬ物言いで、鋭く現状を切り裂いているが、その後30年間、ほぼその預言通りに音楽界が推移してきたことは否めないだろう。オーケストラは、客が入らない現代作曲家よりも、皆がよく知っているロマン派以前の作品を演奏したがるし、今初演作品を聴きに行こうとすれば、どこへ行けばよいのだろう。

 私たちは、これだけ情報が提供される環境にいながら、意外とできたてほやほやの音楽に接する機会に恵まれていない。

新聞でもテレビでもコンサートの情報は、容易に手に入る。しかし、大きく見出しに登場するのは、演奏家の名前であったり、誰でも知っている「昔」の
大作曲家の名前であったりして、現代、同じ時間を生きている作曲家の名前が大きく取り上げられることは、極めて少ない。(僅かな例外として、久石譲坂本龍一!の名前が出ることがあるだろうけれど)

 つまり新進の若手作曲家が精魂を込めて作曲した最先端の「できたてほやほや」の音楽に接する機会が、実に少ないのである。

 そこで提案。ヒット数が極めて少ない本ブログでは無理な話なのだが、全国初演情報のようなサイトを作り、「いつ」「どこで」「だれの」「どのような」作品が初演されるかを、もっと人々に知らしめてはいかがだろう?

 初演というだけで、多くの聴衆が詰めかける理由にはなりにくいだろうが、それでも、新しく創造された音楽に人々が接するチャンスを増やすことができるのではないだろうか?