オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

卒業の歌 考 2

 恥ずかしながら(そんなに恥ずかしがることもないか?)、筆者は小学校の教員をしているので卒業といえば、まずは、卒業式である。

 どういうわけか、筆者は教員になったその年度から、卒業式の歌に関わり、指揮を執らせていただいてきた。若気の至りで、何だか遮二無二取り組んだという記憶ぐらいしか残っていないのだが、その時歌っていた曲が、作詞構成 小林純一 作曲 西崎嘉太郎 の「卒業式の歌」である。

 ファンファーレのように輝かしい前奏に続いて「うら〜らかに はるのひかり〜が ふ〜ってくる よいひよ よいひよ よいひ きょうは〜」という歌詞で始まるこの曲は、小学生としては、かなり長大なオペレッタ形式による曲で、「なかよく あそんでくださった 6ねんせいのおにいさん」と歌われる低学年の歌や「きみ〜たち〜よ」で始まる職員の歌など、いくつかの歌が組み合わさり、歌を通して会場全体が、気持ちを通わせる仕組みになっている。

 いろいろな集団が歌うので、声をそろえることはもちろん、テンポやリズムを揃えることも重要で、当時初任者で駆け出しの私は、まず「合わせる」ことだけで、四苦八苦していたようだ。ただ、大勢が表現に関わることで、大きな儀式をみんなで創り上げたという達成感は、他の曲に代え難い。最近では、卒業式で取り上げられるケースが、少なくなりつつあるようだが、卒業「式」の歌をして、今後も永く歌い継がれてよい曲である。

 さて、卒業式で最も多く指揮(または伴奏)をした曲と言えば、卒業「式」の定番曲、作詞 村野四郎 作曲岩河三郎による「巣立ちの歌」である。「はなのいろ〜 くものかげ〜 なつかしい〜 あのおもいで〜 すぎしひの〜 まどにのこして〜 すだちゆく〜 きょうのわかれ〜 いざさらば〜」と続くこの曲は、私の経験だけでなく、おそらくは全国の卒業式を通じて、もっとも多く歌われてきた曲であろう。

「いざさらば〜」から盛り上げるサビは、まさに岩河節で「泣ける」「気持ちにぐっとくる」旋律であり、それに続くピアノの間奏(ふだんピアノの練習時間がとれない教師でも、オクターブが届いて左手の和音をはずさなければ、それなりに思い通りに弾ける)も、聴き手の気持ちを揺さぶる。

 ただ、出だしがB♭と低く、前半が実に重々しく、どんよりとした表現に陥りやすいのが表現上の難点といえるか?まあ、その辺りをどう料理するかが、指導者の腕の見せ所でもあるのだろうけれど。

「卒業式の歌」も「巣立ちの歌」も、そして最近では、SMAPがCMでも歌っていた「旅立ちの日に」も、多くの学校で取り上げられるのは、曲の中に卒業式の歌としての魅力が、いっぱいつまっているからだろう。

 これらの曲が児童生徒によって選ばれて決まったか、または先生が決めて歌うことになったかは、学校事情によって違うだろうけれど、教師として問いかけるべきは、歌い手である一人ひとりの卒業生に「何を歌うか」ではなく「今の自分の気持ちをどう歌うか」という問いに他ならないのである。