オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

NHK「地球ドラマチック 町中みんなで合唱団」を観て

 鳩山内閣が幸福度を調査するそうな・・。でも幸福なんて数値化する必要はない。ましてや量的に統計で表現するものでもない。無理矢理数値化を試みれば、自ずと資産・金銭の回り具合や社会的な地位や役割に目が向きがちになろうもの。そんな所にしか幸せの価値を見いだせないとしたら、そういう国民こそかなり不幸である。

 人は、笑顔に出会うと幸せな気持ちになる。笑顔や喜びは互いに響き合い広がっていくので、共振して笑顔の輪が広がっていく。人々は、日々の生活の中で、あるいはスポーツの観戦を通して、またさらには芸術の共有体験を通して、笑顔を分かち合っている。一言で言ってしまえば、「感動を共有できる場がある」ことが、幸せなのである。

 そんな単純な真理を愚直に追求しつづけている合唱指揮者ギャレス・マローンと彼の周りに集った合唱団のドキュメントがNHK「地球ドラマチック 町中みんなで合唱団」である。実は、筆者も(ギャレスのように格好よくない・・・とは家内の発言だが)若い頃合唱団づくりに携わった経験があるので、かなり共感的に番組を観ることができた。

舞台となったサウス・オキシーという町は、不景気のあおりを受けてか、経済的には、決して裕福とは言えない地域のようである。「お金はあんまり無いけれど、地位も名誉もないけれど、私たちには歌がある!」そんな昭和30年代的なメッセージを、この番組から感じ取ることもできるだろう。

 冒頭で、政府の幸福度調査に苦言を呈しているが、私は何も「清く貧しく美しく」を礼賛しているわけではない。ただ己の止めどない物欲に振り回されていたあのバブル期の生き方に対する反省が、すでに20年近く経過した今も一向に生かされていないように感じるのだ。もちろんお金はないよりか、あるに越したことはない。資本主義社会がこの先も続く以上、貧富の差が解消されることは永遠にないのだから。

 世代を越えた貧しさの連鎖が語られ初めて、随分時が流れた。富める階層は、子どもの教育に投資できる。その結果子どもは高い学歴や資格を得て、社会に飛び出していく。反面貧しい階層は、親自身が日々の生活でめいっぱいな為に、子どもの教育に構うことが困難である。結果家庭事情が原因で上級学校へ進学できず、就職するケースは数多い。これまた現政権の目玉商品である「子ども手当」の創設が、どれだけこの厳しい事態を緩和できるか注目したいところである。

 未来を創る子どもたちの課題にまず手をさしのべる。実に説得力のある政策には違いない。(財源はともかくとして)だが、次に現実の中で実際に日々苦闘し、喘ぎ苦しんでいる大人達はどうする?夢も理想も失い、不満を募らせながらも、現実を受け入れざるを得ない人々のことをどう考えるのだ?

 番組に登場するサウス・オキシーの合唱団にも、夢や理想を失い欠けていた人が含まれている感じである。音楽ができること、歌ができること、それは、税金を投入し人々に金銭をばらまくことではない。ちょっぴり人々が他者への信頼感を取り戻し、元気になること・・それだけに過ぎない。でもそれだけのことが、何と人の生活を変えることか!

 番組では、歌う喜びを知り、歌を通して仲間と出会い、合唱という仲間と共に創り上げるハーモニーに感動する人たちの姿が、インタビューを通して克明に描かれていく。インタビューに答える人は、老若男女・それぞれの境遇を問わず、実に多彩な面々であるが、誰もが表情から笑顔があふれこぼれだしている。

 そして、この番組は、単純であるが次の真理を伝えることに成功している。
「歌って、楽しい!大勢で歌えば、もっと楽しい!!」ということを。