このシリーズは、勝手な思いこみだけを動機付けにして、だらだらと書き続けているが、この曲を落とすと「?」と思う人が多いだろうな・・という懸念から、やはり書くしかないと思った名曲。この曲の旋律の美しさは、一度聴けば忘れられないもので、メロディーメーカーとしての桑田の能力が、ここにもいかんなく発揮されている。
桑田自身も、この曲の売れ行きと評価については、それなりに自信をもっていたようで、有名な逸話ではあるが、この年のレコード大賞が「おどるポンポコリン」に決まった後、その夜の年越しライブで「レコード大賞が欲しかった〜!」的な発言をしている。レコード大賞について言えば、最も音楽的に優れたレコードや曲に贈呈されているわけではないことは、かなり自明の理になっており、桑田にそこまでのこだわりがあったことも少々驚かされるが、それだけこの曲への思い入れが強かったという裏返しでもあろう。
この頃、桑田はメガホンを握り、映画を作っている。「稲村ジェーン」だ。伊丹十三が、北野武が・・映像表現に関心を寄せる才能が次々に映画製作に関わっていた頃でもある。(そのうち、北野武が、あれだけ国際的な監督に成長することは、誰が予想していただろう?)「真夏の果実」は、詩情あふれる映像に流れる挿入歌でもある。ウクレレだけの伴奏で歌われるちょっとけだるい歌い出しが、実に映画のイメージに重なっているところも、やはりさすがなのである。