オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

桑田の歌がいつもそこにあったっけ 11

愛の言霊

 涙のキッス以降、「エロティカ・セブン」とか「マンピー・・」とかエロ歌街道を驀進していたサザンが、この曲では、一転してそれまでの彼等がやっていた音楽とは違う表現を聴かせてくれた。この自由奔放さ、幅の広さこそが、桑田の魅力なのだけれど。
 言霊というタイトルからして、「おや?」という雰囲気なのだけれど、歌詞を読み始めると、「おや?」の疑問がさらに深まっていく。それまでも歌詞が意味不明であったり、一瞬聴きとれなかったり、単なる語呂合わせやはめ込みであったりすることが多かった桑田の歌詞が、ここへ来て、不思議な世界に踏み込んで行ってしまったように感じるのだ。
 前半の叙情詩(セリフ)や挿話の発音法を古代国語の発音と結びつけて、論じている方もいらっしゃり、非常に関心を引くのだが、最もシンプルにメッセージ性を帯びて、伝わってくるのがラップ部分の次の歌詞だ。、

 幾千億年前の光が 人の世の運命を僕に告げるの
 過去に多くの人が 愚かな者が 幾千億年前の星の光見て
 戦をしたり 罪犯したなら ぼくもまたそれを繰り返すのか

 今は滅びた星の光なのに 見つめるままに 夢に見るたびに
 涙ぐむのはなぜなのか そして僕はどこから来たのか
 この魂は誰のものなのか

 時代の気分は、世紀末。日本はバブル崩壊のショックから全く立ち直れない閉塞状況。その中で、桑田が敢えて「過去の歴史」や「平和」について問いかけていることを、真摯に受け止めたい。「平和の琉歌」を始めとして、社会を風刺し、人々に問いかける曲が桑田には、いくつもあるけれど、愛の言霊にもその思想の一端が覗いているように感じられる。