オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

編曲の達人たち3「最上川舟歌」の場合

 また、TV番組の話で恐縮だが、「いい旅夢気分」と言う番組が好きで、よく観ている。この前は、具志堅用高片岡鶴太郎が山形を旅しており、番組から正調の最上川舟歌が聞こえてきた。
 松尾芭蕉ゆかりの最上川だが、「最上川舟歌」を芭蕉は聴いていない。現在伝わる民謡は、昭和11年にNHK仙台放送局の取材に絡み、作・編曲されたものなのである。そのいわば新しい民謡を、男声合唱に編曲し、さらに広く世界に知らしめたのが、清水脩氏である。この譜面は、海外から来日する合唱団にも演奏されている。力強い声で「エンヤ コラ マーアカショ」と歌われる様は、さぞかし滝のように流れる急流を巧みに櫓を操りながら、遡るようである。実際テンポは速く、強弱の振幅も大きい。とりわけ曲の最後を飾る掛け合いの部分は、すさまじく緊張感がほとばしり、聴衆の感興を誘う場面となっている
 ところが、実際の「正調」最上川舟歌は、当然のことながら、もっとゆったりした節回しなのである。上の男声合唱曲のように漕いでは、5分と身が持たないであろう。学生時分から歌っているのだが、ようやく曲が仕上がった頃、ある先輩が、「これが正調の最上川舟歌だよ」と聴かされ、歌っている曲との違い、違和感に愕然とした記憶が残っている。
 つまり、ここまでくると、編曲というよりは、もはや作曲なのである。「最上川舟歌の旋律を元にした合唱曲」とでもいうべきなのだろう。もちろん合唱という表現方法に変化したことで、より多くの人に「最上川舟歌」を知らしめた功績は誠に大きいと思う。