オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ルネサンス音楽の喜悦 2 パレストリーナとの出会い

 バロック音楽を語るときに、バッハやモンテヴェルディを外すわけにはいかないように、古典派の名前の真っ先に、ベ−トーヴェンやモーツァルトが出てくるように、私にとって、ルネサンス音楽の始めにパレストリーナやヴィクトリアが挙がることは、極めて自然な話である。
 英国にプロカンツィオーネ・アンティカという、とてつもない演奏を聴かせてくれるグループがあった。私とパレストリーナとの出会いは、当グループが歌う「エテルナ・クリステ・ムネラ」の演奏を聴いた時に始まる。
 例え方としては、奇妙だが巻き寿司を、どこで切ってどのようにかじりついても美味しいように、パレストリーナの音楽もどこの断面で一時停止しても、美しい。限りなく美しい音の重なりが連続するのである。書法はポリフォニーなので、主旋律に対して他声部が和声をつけていく今の合唱スタイルとは、根本から異なる。すべてのパートが独立性を保ち、互いに糸を織りなすように絡み合いながら、進行していくのである。
 当時、とある大学の男声合唱団で学生指揮者を務めていた私は、当楽譜を演奏経験のある他大学から譲っていただき、早速レパートリーに採り上げたのだった。ルネサンス音楽への理解と共感という意味では、未熟な取組であったが、未だ感性が瑞々しい学生時代に、パレストリーナと出会えた事は、大変幸せな経験であった。