アレンジャー武部聡志の名前を初めて目にしたのは、ユーミンのアルバムだったろうか?それとも吉田拓郎のアルバムだったろうか?いや、それよりももっと前からキーボード奏者として、クレジットされていたのを、どこぞやで見かけている。
麻布高校から国立音楽大学という学歴を辿った先輩に、かの山下洋輔がいるが、それは音楽性の形成とはそれほど関係がなく、洗練された都会的な音響が彼の真骨頂だろうか?そこには、日本的な湿っぽい情緒感などは、あまり配慮されていない。強いて言えば、高齢者世代にとっては、少々バタ臭い雰囲気が伴う。
ただそのハイカラさが、横浜という街のモダンさと映画の中で、上手く融合している。物語がどこまでも明るく前向きに進んでいくのは、武部氏の音楽の明るさに支えられている部分は大きいと感じた。宮崎アニメといえば、久石譲氏がお決まりのように担当していたが、今回は武部氏を起用することで、巨大なオーケストレーションに支えられた壮大なストーリーから、一歩外に踏み出した世界を築こうとされたのかもしれない。
欲を言えば、音楽がよくできているために、何カ所か絵を凌いでしまう場面があったように思う。監督との連携プレーの中で、合意されてきた結果だとは思うのだが。
日本を代表する編曲家でありながら、映画での活躍は今まであまり語られてこなかった武部聡志氏の今後のさらなる活躍に期待したい。