オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

コクリコ坂を彩る音楽 4

 今回は直接的には音楽の話になりそうもない。強いてこじつければテンポ感の話ということになろうか。
 アニメーション。漫画では紙の上に固着されていた絵を存分に躍動させる。他の幾多の表現芸術がその方法でしかその表現が可能にならない何かを持っていることと同様に、アニメーションの定義は「動く楽しさ」にあると思う。
 初期宮崎アニメ(父駿氏が作成していた頃)は、かなり「空での動き」「空からの視点」を大切にし、一種テーマ化されていたように思う。各アニメの主人公たちは、翼もないのに空を自由に飛翔し、その姿に惹きつけられたものだ。飛ぶシーンが少なくなってきたのは「ハウル」や「崖の上」の頃からだろうか?ストーリーに空を飛ぶ必然性がないと言えば、それだけのことだが。
 さて、今回の「コクリコ」でも、人は空を飛ばない。いや、別に飛ぶ必要もない。ならば、いつ加速し、どこであり得ない位の躍動感を見せてくれるのか・・と期待すると、これが意外とおとなしいのである。学生集会の場面など、もっと群衆がひしめきうごめいて、ざわざわっとしても良さそうな気がするのだが。その傾向に伴い武部氏の音楽も、中庸なテンポで流れている。ギリギリの加速感、危ないくらいの緊張感を感じる動きが、画面上も音楽上も、少ない気がする。
 ありきたりの日常生活の中では得られない興奮を求めて、映画館に足を運ぶファンのニーズに応えてくれるアニメ作りを、今後の吾郎監督に期待し、エールを送ってこの稿を閉じたい。