オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

今、歌っている曲 3ー4

 柳河風俗詩について、もう一つ。あまり気にせずに歌ってきたのが4曲目「梅雨の晴れ間」の歌詞についてである。詩人白秋が少年期に見物した歌舞伎の楽しい情景が描かれていることは、すぐにわかる。
 しかし、ここで思い起こしたいのは、作曲者多田武彦も、父・祖父とも松竹の役員を務めていた人物で、その影響で少年期から歌舞伎の舞台を見物していたという事実である。詩の選択にあたり、歌舞伎芝居の情景が描かれている「梅雨の晴れ間」に触手が自然と伸びたことが想像できる。
 もう一つ、自分自身歌い手としての不明を恥じるわけだが、忠信・狐六法ときて、何の演目のどの場面のことだか、思い浮かべながら歌っているだろうか?
 演目は義経千本桜で、鼓(鼓は静御前が持っている)にされた親狐を思い、子狐が義経の忠臣佐藤忠信に化けて、演じる場面だ。狐六法という動きの理解が十分でなければ、楽譜上のスタッカートも本来は表現できないわけで、このあたりが男声合唱という蛸壺にはまってしまうと、本来見えていた筈の他の芸能の楽しさや奥深さに目を閉じてしまうことがないか?ということである。
 男声合唱は、私にとって魅力的な表現ジャンルであり続けているわけだが、いやしくも表現者として立つ以上は、歌舞伎のような日本の古典芸能をはじめ、幅広い経験や知識の上に自分の表現が成立していることをゆめゆめ忘れてはならないと肝に銘じたい。