音楽ファンにとって悲しい知らせが、相次いでいる。先週は、尾崎紀世彦さんの訃報が報じられた。
尾崎紀世彦といえば「また逢う日まで」。和田アキ子が「あの鐘を鳴らすのはあなた」、八代亜紀が「舟唄」を歌い続けているように、この曲は彼の代表曲であったし、私自身もこの曲で尾崎紀世彦のものすごい声を初めて知った。他にも表題にした「さよならをもう一度」とか「五月のバラ」とかいい曲はたくさん持っているのに、目立つ場面では、やはり「また逢う日まで」を歌っていることが多かったと思う。
玉置宏は番組の中で、よく「キーヨ」と呼んでいた。デビュー当時のキャッチフレーズは「和製トム・ジョーンズ」である。誰もが今まで歌謡界に存在しなかったその歌唱力に脱帽しつつも、それまでの系譜がない突然変異的な歌手として、異彩を放っていた部分があったのかもしれない。
大ヒットしていた頃、まだ中学生だった自分は、茅ヶ崎の家の前まで自転車で行ったことがある。別に本人に会えたわけでも何でもないただ家が近かったというだけの話なのだが。
その後、カラオケでよく歌っていたのは「サマーラブ」だ。「また逢う日まで」は実はかなりキーが高く、尾崎紀世彦がトップテナーであったことが、改めてわかるのだが、大概の場合、あの声量と声質からバリトンとかん違いしてしまう。ウルトラセブンの冒頭で尾崎紀世彦の「セブン」が聴こえるが、やはり高い音だったはず。その点「サマーラブ」は、素人にもとっつきやすいキーでよく歌わせてもらったものだ。
いい曲は、いずれ誰かにコピーされて、歌い継がれていく。「また逢う日まで」もやがて誰かが、持ち歌にするだろう。でも、この曲を聴く時、誰もが尾崎紀世彦の歌声を思い出すに違いない。一世を風靡した名歌手の存在を。