落合博満「采配」を読む
日本のプロ野球史上、最高の右打者は誰かと問われれば、野村克也か落合博満か、少し迷った挙句落合博満氏の名前を挙げるだろう。この二人には、共に名監督として名を馳せたという共通点もある。落合博満氏の場合は、8年間の任期中、4回のリーグ優勝、すべてAクラス入りという実績をもって、評価されているわけだが。
「コーチング」という本がとてもおもしろかったので、ベストセラーになったという「采配」も読んでみたわけだが、誤解を受けやすい発言やコミュニケーションの取り方が、書物という媒体を通すことによって、より正確に伝わってくるのが、何より嬉しい。とにかく著者は、スーパースターであった現役時代からとかく誤解を受けやすかった人なのだから。そして監督になってからも、ベンチの所定の位置で、目をキョロキョロさせながら、あまり自らが体を動かすことは少なく、それでいてチームは憎たらしいくらいに強いので、これまたマスコミにとっては扱いにくい存在であったように思う。そのマスコミやファンへのスタンスの取り方が、本書を読むと少しわかる。素晴しい実績をを残しながら、人気が偏っている点では、大相撲の大横綱北の湖に似ていなくもない。
本書やコーチングを読むと、大上段に人材育成とか力んでいる人は少なからず恥かしい思いにかられるのだが、最後の方で、基本を身につけることと方法をそれぞれが試行錯誤し工夫していくことの混同を戒めているくだりは、大いに参考になった。
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