オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

維新前夜の群像5 大久保利通を読む

維新前夜の群像5 大久保利通を読む

「リーダーにモデルはあるが、正解はない。」と思い込んできたし、今も考えは変わらない。読書を通して、歴史上の名リーダーたちの生き方(モデル)から何かを学び取ることができたなら・・との思いから、この年末年始の休みを利用して読んでみたのが、上記の本である。
日本という国の形を造り上げてきた人の名前を三人挙げなさいと言われたら、私は迷わずに、大久保利通吉田茂、そして源頼朝の名前を答えるだろう。聖徳太子天智天皇、さらには創造者であると同時に大いなる破壊者でもある織田信長なども欠かせない名前だが、歴史を辿ると先の三人の偉業が突出しているように思えてしまう。
大久保利通は、明治維新という時代の大きな変わり目を岩倉具視と共にプロデュースし、その後は明治政府大幹部として、現在に至る官僚制の確立と「富国強兵、殖産興業」という国家の大方針をほとんど独力で打ち立ててしまった人だ。(富国強兵の強兵については、第二次世界大戦が終わるまで、その路線でひたすら突っ走ってきたのは周知の通り)
本書の面白さは、内務卿として独裁体制に至る以前の大久保の苦闘と失敗の履歴にある。薩摩藩島津久光の側に仕え始めて、朝廷内部に深く通じ、維新を成し遂げる過程において、どれだけの失敗を積み重ね、粘り強い努力を必要としていたかが、わかりやすく記されている。一介の下級武士階級出身に過ぎない大久保が、大名や公家と対等に渡り合う政治力を身につけることができたのはなぜか?その理由を考えてみることは、現代に生きる私たちにとっても意義があることだろう。
また公武合体運動の頓挫から、倒幕→王政復古明治政府誕生に至る思想的な変遷をも読み取ることができる。理想や夢を語り説き、明治という新たな時代を見ずに亡くなっていった仲間が彼の周りには、たくさんいたはず。しかし、大久保は今の状況下で、できることのうち最善な方法は何かを常に問い続けた。そして成し得た成果が明治維新だったのだ。





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