オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

宮城谷益光「草原の風」(中・下)を読む

宮城谷益光「草原の風」(中・下)を読む

長編を読破するためには、当然時間を確保しなければならない。のんびり時間をかけて読み通そうと思っていた本が、プラネタリウムの入場待ち時間という突然どうにもならない時間が出現したため、さっさと読み進めることができた。これも電子書籍の利便性かもしれない。
中巻では、まず本のタイトルである草原の風の意味が語られる。草原を民の生活と考え、列候の存在を時として草原に影を落とす樹々とするならば、草原を吹き抜ける風を為政者たる者は感じていなければならないという主人公劉秀=光武帝の信念がタイトルに凝縮されているのだ。それは皇帝になってから、奴隷解放をやってのけた施策と思想を一つにしている。さらに昆陽の戦いで百万の敵兵をほんのわずかな兵力で敗走させた活躍、河北にて厳寒の地をわずかな供を連れて当てもなく彷徨う姿が描かれる。そして下巻はほとんど一気に皇帝にならざるを得なかった経緯が語られるのだ。
理想的な政治家像、リーダー像として、劉秀の生き様は大いに肯けるのだが、少々ひねくれた私のような読者はデキスギ君的な近寄り難さを感じてしまう。人間は不完全でしょうもない存在であるが故におもしろいのであって、このドラマに登場する劉秀は、お手本というか100点満点の部分が目立ち過ぎるように感じてしまうのだ。


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