オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

戸川猪佐武「吉田茂と復興への選択」を読む

戸川猪佐武吉田茂と復興への選択」を読む

日本の歴史を築いてきた極めてワンマンな政治家の名前を4人挙げよう。古い順に、源頼朝織田信長大久保利通、そしてワンマン宰相吉田茂。中には織田信長のように独裁者と紙一重の人物が含まれているが、これら4人の共通点は、後年あたかも彼等による強力な指導力を必要としていた時代であったかのように錯覚?してしまうほど混迷を極めた時代に登場しているということである。英雄や偉人として数多くの伝記が読まれている頼朝公、信長、大久保利通に比べて、吉田茂の伝記、とりわけ子ども向けに書かれたものは少ない。(ない?)
吉田茂に関する著作を読むのは、北 康利「吉田茂 ポピュリズムに背を向けて」以来だが、上記の本が、戦前の外交官時代から戦後の首相時代に至るまで、波瀾万丈な生涯を綴っているのに対し、戸川さんの著作は、1945年からサンフランシスコ講和条約が締結される1951年までの6年間に絞って、吉田茂の政治行動のみならず、ゼネストレッドパージ、片山内閣の矛盾と苦悩、ドッジライン、集団的安全保障の論議等々、戦後の政治状況が詳細に語られている。著者の視点は、事実をできる限り客観的に伝えようとしており、各勢力への同情的な記述を抑制している。ジャーナリストである著者の面目躍如だろう。
本書を読むと、日米安全保障条約が草案段階から、個別的安全保障と集団的安全保障の問題について議論されていたことや、GHQの政府に対する姿勢とりわけアメリカの態度が国際情勢によって変化していくこととマッカーサー罷免に関わる内情などがよくわかる。
戦後日本が吉田茂というしたたかで頑固な保守主義者を総理に据えていたことで、切り抜けられたと思われる局面が随所に垣間見える。根回しや調整を真骨頂としている政党政治家ではなく、外交官上がりでいかにも官僚的ではあるが、彼の交渉力や判断力が今日に至る日本の復興・発展にとてつもない貢献をしていることは、やはり否めない事実であろう。






iPadから送信