オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

安岡正篤「王陽明」を読む

安岡正篤王陽明」を読む

陽明学に心を惹かれるところがあり、昭和における第一人者である著者の本書を読んでみた。文中に「そもそも知性というものの魅力は、一つの安易性、イージーネスにある。それは現実の限りない複雑性を代えるに、解釈という都合のいい分析や総合を試み、生という惑いに充ちた現実に対して、簡単な答案を書くことである。」 「才器はすぐできるが、徳器でなければ本当でない。」など、まるで筆者が存命し、現在の日本の教育状況に警鐘を鳴らしているかのような言葉が随所に散りばめられている。
本書は、王陽明の到達した思想を真正面から分析解説すると言うよりは、この偉大な明代の学者の波乱万丈な一生を追いかけ、それぞれの苦境の中で発想した「知行合一」や「致良知」について触れている。
高度情報化社会の到来によって、私たちが見失いがちな「その知識をもって、何を為さんとするのか?」への問いかけや、自分を見失いかけている人々に対して「自分の中に元々良知として備わっているもの」の確認など、王陽明の教えが現代においても、多くの示唆を与えてくれていることを本書は提示しているように思えた。





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