子どもたちに、「平和のために戦争をするって、おかしいと思わない?」と聞いてみたことがあった。かなり心にヒットしたようで、しきりとうなづいてくれた。
本書には、暴力という章があり、平和の福音をもたらす必要悪としての暴力とか、暴力の根絶がいつの間にか善悪の問題に転換され無制限の暴力を生み出しているなどと刺激的なことが書かれている。そして、マルチチュードというつながりが、国に取り込まれないスタンスのあり方として、提示されている。
本書は、およそ10年前の小泉政権時代に書かれている。しかし、私たちが現在直面している改憲論議や歴史認識に言及している項は、まるで現在の政治状況を預言しているかのようだ。改憲論議については、政教分離によって、近代国家が成立した背景を語りながら、祭政一致の危うさを指摘している。また、歴史修正主義に対して、ナショナルヒストリーを都合のよいように語っていては、隣国との溝を乗り越えることができないと警鐘を鳴らしている。私には東北アジアの未来に期待する最終章に筆者の思いが込められているように感じられた。
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