オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

ブラームスの合唱曲にひたる 第六夜

作品53 アルトラプソディーを聴く。休日の午前中に音楽に浸れるということは、旅行先で朝風呂につかるのと似たような贅沢な気分である。
この曲はシューマン家の三女に思いを寄せていたブラームスが(例によって気持ちを打ち明けたわけではなく、相変わらずはっきりしないモヤモヤ男なわけだが)、相手がイタリアの伯爵と結婚してしまう事実に直面し、エネルギー逆噴射的に創り上げてしまった曲である。この曲の第一部、第二部まではブラームスにしては、どこか破天荒で、ロベルト・シューマン的に予測不能な旋律を描いている。だからこそラプソディーと言ってしまえばそれまでだが、私はこの背景に感情に筆を任せた時のロマンチスト・ブラームスの一面を感じる。また結果として、新たな表現の可能性を獲得したと言えるのかもしれない。
男声合唱愛好家にとって一度は歌ってみたいアルトラプソディーだが、待望の男声合唱はなかなか出てこない。第三部になってようやく登場するのだが、救済を祈願する青年の気持ちを歌い上げるくだりに作曲者が男声合唱の響きを求めたのだろう。男声合唱を愛する若者にぜひ歌ってほしいと思う。曲想は、第一部・第二部とは変わり、明るく安心した境地にようやく辿り着いて曲が閉じられる。前半から中間部にかけて、激烈な心情を歌ってきただけに最後の安堵感がありがたく、聴き手も曲想とともに安心するのだ。