オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

山本敏晴「世界で一番いのちの短い国」を読む

テレビを見ていると、寄付を呼びかけるユニセフの広告が流れることがある。本書にも関係する国境なき医師団の広告を見かけることもある。もちろん、心を突き動かす実態に感じる部分はある。けれど、もう少し具体的に何をしている誰に対して何ができるのか?を調べてみたい気もしていた。そんな中で、日曜夜の「夢の扉」という番組で、日本紛争予防センターの瀬谷ルミ子さんを特集していた。それが、その番組には登場していないけれど、山本敏晴さんの活動を知るきっかけだった。
読み手を意識して、笑いあり、涙ありの筆遣いで、読者を引き寄せ一気に読ませてしまう本書だが、そこで語られている現実は、決して軽いものではない。とりわけ心が痛んだ事実は、子ども兵や四肢切断というとんでもない行為についてだ。人間が行う残虐な行為には底がないことに改めて背筋が寒くなる。
西洋型の民主主義、資本主義、医学が、途上国の人々を見下すような形で、これしか正解はないというが如く押しつけられている現状に、筆者は本書の中で警鐘を鳴らしている。それで、まず現地語を覚え現地のスタッフや患者さんとコミュニケーションを取りつつ、信頼関係を構築する大切さを説いている。(語り口が決して説教めかないところが、とてもいい)さらに自分自身が半年の任期を終えて去った後も、医療レヴェルが維持できるように現地スタッフの教育に力を注ぐ場面は、本書の中でも最も説得力がある部分だろう。
地球は、現在様々な問題を抱え、その解決に多くの知恵と行動力を必要としている。全てが二進も三進もいかなくなるデッドエンドにならないうちに、何とかしなければ間に合わないと気持ちばかりが空回りしているようにも感じられる。本書を読んで、国際協力の具体にふれることができたのは、私にとって大きな収穫であった。