オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

丹羽宇一郎「中国の大問題」を読む

私たちが、自然にいだいた感情と思い込んでいるが、実は操作されてつくられた感情である場合はないのか?読後感じたのは、外国に対する好感度あるいは嫌悪感のうち、とりわけ中国に対する感情である。
私たちは、国内にいる場合は、海外の情報について、通常マスメディアというフィルターを通してしかわからない。しかし、マスメディアが意図的に情報を操作しているとすれば、私たちは本当のことを知らされないうちに、偏った情報を元にイメージを膨らませてしまうのではないだろうか?中国に対する最近の好感度の数値は、実際に両国間の間にさまざまな問題が横たわっているにせよ、かなり低く感じてしまう。
なら、実際の現場をよく知る人に聞くか、自分で行ってみるしかない。後者は難しいわけで、前者つまり伊藤忠商事社長から中国大使に任命された丹羽宇一郎さんの本から学ぶことにした。丹羽さんの情報こそ偏っていると考える方は、いらっしゃるだろう。しかし、私は最前線の現場にいた方の言葉に耳を傾けるのは、初めの一歩だと思う。

中国を理解するために必要な共産党による統治システムの話。今や日本を追い抜き、世界に冠たる経済大国となった経済の話。少数民族の話。懸案の尖閣諸島をはじめとする外交問題の話等を説明しながら、今後の東アジアで日本はどのように外交を展開していくべきか?が熱く語られる。少なくとも毎日のトップニュースや見出しだけを見ているだけでは、私には読み取れていなかった幾つもの現実が書かれていた。

本書の最後で、世界に一つだけの花で歌われているオンリーワンを揶揄しながら、上昇志向に背を向けている若者を嘆いている。高等教育への進学率の低迷や義務教育段階での教員の不足は指摘の通りで、教育への投資をためらっている国の未来は、およそ予想ができる。
私には、企業が非正規労働者に依存し、若者に夢のある未来を提示できていない大人の責任も大きいように感じた。自信や誇りといった感情は、年長者の背中から学び取っていくものかもしれないから。