オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

香山リカ「しがみつかない生き方」を読む

等身大という言葉。アナ雪の「ありのままの・・」にも通じそうだけど、恋愛、自己顕示、失敗、老い、記憶、仕事、子ども、金銭、生まれた意味に至るまで、私たちの生き方をがんじがらめに縛りつけるもの。また私たちがあまりにもとらわれ過ぎ、気持ちが支配されている原因。それらに対して、著者は精神科医として、自己肯定感を下げてしまう要因にさえなりかねない状態に、警告を発信している本。ふと般若心経の色即是空、空即是色が、思い浮かんだ。

お医者様または医学部出身で文学に関わった人、森鴎外、木下杢太郎、斎藤茂吉、その子斎藤茂太北杜夫、その友人なだいなだ、加賀乙彦山田風太郎安部公房手塚治虫渡辺淳一、海外ではコナンドイル、サマセット・モームetc・・・、医者、医学研究者という激務を縫うようにして、彼らが創作に向かい、素晴らしい成果を残していることは、驚くべき話なのだが、香山リカさんもその例に漏れない。医者として追い込まれている人と一対一で接する経験が、おそらく本書の説得力になっているのだろう。

終章で、人生100点でなくても、60点〜65点でいいじゃないと結ぶ。その裏に本書の底流として、競争へと人を駆り立てる新自由主義的な思想に明らかに距離を置いている筆者の立ち位置が透けて見える。成功者として勝間和代をターゲットにしているのも、その延長線だろう。(ちょっと暴走気味だが)
最近、何かの場で天才バカボンのパパの名セリフ「これでいいのだ」を使って話をさせてもらったが、本書の内容も「これでいいのだ」に通じる部分がある気がする。