オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

鴻上尚史「クールジャパン!?」を読む

まず、一番表面的なところだけを撫でて読むと「へえ、それも日本製だったのか!日本ってすごいじゃん!」になる。これが本のタイトルにある「!」マークの意味だとしたら、「?」マークは、一体何なのか?そこに鴻上さんの思いや立ち位置を嗅ぎ取っていかないと、本書は単純な日本文化万歳!本になってしまう。
日本文化のちょっと深いところへ潜ろうとする箇所が、少なくとも二カ所ある。一つは「世間」と「社会」という切り口で、日本人の他者との関わり方を論じている部分。もう一つは、後半に包括的な東洋と分析的な西洋を対比させて語っている部分だ。他にもキリスト教信仰の影響による行動に言及している部分もある。
さらに潜れば、その比較論だけで、一冊の本ができるのだろうが、著者はそこまでは深く潜行しない。日本文化の素晴らしさを、あくまでも相対的に受けとめるように、適度にブレーキを踏んでいる感じがするだけである。日本文化にどっぷり浸かった日本人である自分を振り返ろうとしているのだろう。
著者が、演劇人であることと元がNHKの番組ということも関連しているに違いないが、語っている土俵は、どこまでも文化論である。思想や哲学、政治や経済についてのクールなジャパン!は、取り上げられていない。
政治で言えば、70年間平和憲法を守り、どこの国とも戦争していない日本は、極めてクールだと思うし、経済では敗戦の焼け跡から世界に冠たる豊かな国に成長を遂げた日本もクールだろう。今後この非常に稀な文化を有する国は、さらに世界に向けて様々な発信を続けていくのだろう?
ただ、何のために何を?について、日本独自の立ち位置と視座がより求められてくることは間違いない。クールであり続ける日本が考え続けるべきは 、安易に大国に寄り添わないその独自性だと思うのですが。「? 」マークがついている意味は、そのあたりかもしれない。