電子書籍で買ったもう一冊。過疎の村を舞台にした小説は、例えば三浦しをんの「神去村」シリーズがある。本書は、林業に携わる人々を描いた物語のようには展開しない。主人公は、かなり怪しげな広告社のメンバーだ。そこに牛穴村の青年会幹部が行きがかり上、関わってしまったという筋立てなのだ。
広告代理店が、国家的なイベントを動かし、大げさかもしれないが まるで時代を創っているかのごときイメージを、夢多き青年たちに与えていた時代があったと思う。ひょっとすると今だってそうかもしれない。本書のウシアナザウルスことウッシー騒ぎだって、大勢の人が振り回され、話題を独占してしまうという構図そのものだ。
オロロ豆の美味しさが、広く知れ渡るきっかけなど、騒ぎが残していったメリットが終盤語られる。ところがこれでめでたしめでたしならないところが、主人公たちの落ち着きのなさで、今度はドードー鳥のロマンを追い求めて、再び駈け出すところで本書は終わる。このおっちょこちょい加減が、ユニヴァーサル広告社の魅力なのだろう。シリーズものなので、また機会があったら読んでみようかな?