オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

有川浩「三匹のおっさん」を読む。

退職してから行き始めた所の一つに、地区センターやコミュニティハウスの図書室がある。その後しばらくして、新しい合唱グループの会場予約で定期的に来るようになった。いつも時間より少し早めに着くので、持て余した時間は書架の本を読んでいる。
ある日、手に取った本が「三匹のおっさん」。頁をめくると定年を迎えた男性が主人公であることがすぐわかる。嘱託で働き始めたことが、非常勤講師をして収入をほどほどに補っている自分と少し似ている。
ただ、まるで違うのは、キヨさんこと清田清一さんが剣道の達人であり、隠れた正義の味方であることだ。六話に及ぶ物語は、同じく武道家で柔道のシゲさんとちょっと危ないメカオタクのノリさんの三匹の勧善懲悪劇に、キヨさんの孫祐希とノリさんの娘早苗の恋ばなが、レモン汁をかけるように甘酸っぱい香りを添えて進んでいく。作者は恋愛モノに長けた作家と見えて、若い高校生二人のやりとりが、自分も還暦であるおじさんには、どうにも眩しかった。
亡き児玉清が、ラジオで熱弁を奮って、この本を推したエピソードが巻末に添えられているが、張り詰めた仕事生活から解放されて、ゆったりリズムの中で日々をぼんやり過ごしているアラ還世代には、元気が湧いてくるきっかけになるかもしれない。なぜなら、この物語の通奏低音は、お節介過ぎるおっさんたちの「正義感」なのだから。