吠えるように歌う、歌ってしまう合唱団がある。もちろん意図的にそうしているならアリだけれど、それが癖になっているとちょっと哀しい。
そもそも人類は吠える生物ではない。犬や狼のように吠えることができない。親戚筋?の猿は、怒るようにキーキー言うが、あれは、吠えるとは違う。集団で生活することで保存されてきた動物だから、小社会の中で遠くまで聞こえるような声を出す必要があまりなかったのだろう。
ならなぜ?歌を歌い始めたのか?歌うように鳴く動物は、他にもいるらしいが、人類ほど音に明確な高低をつけて、しかも全く独自の通信手段である言葉を伴って歌う生物は他にいないだろう。
始源として最初に思いついた想像できる歌は、子守唄である。ちっとも泣き止まない赤子を何とか寝付かせようと母親が、何かしらの旋律を伴って歌った情景は想像できる。ただ、これは人類が言語を獲得した後の時代だと予想される。
次に、祈りや呪文に伴う歌。巨大な自然の力に抵抗するのは、昔も今も不可能だが、神に仕える神官や占術師にすがらざるを得ない割合は、昔の方が多かっただろう。これは、かなり大きな集団が出来ていて、その人々が米作りなど同じ目的で生産活動をしている場合が想定できる。自然崇拝に似た宗教が芽生えていた時代以降。
神官や占術師は、トランス状態に入ると、危なっかしい何だかわからない言葉を口走りながら、その「歌」を歌ったことだろう。それが宗教曲に昇華するまでは、かなりの時間が必要だったろうけれど。
三つ目に、宴を盛り上げる歌である。これはおそらく踊りやパーカッションを伴って歌われたに違いない。後世になって祭り歌になる原型が、火を囲んで生活していた人々の間で歌われていたと思う。ひょっとするとこれはかなり古い音楽だ。火の周りに集まり、夕餉を囲む前提ができていれば、集団はまだ小さいものであったとしても成立できる。初めはリズムだけ。そのうちかけ声が加わり、やがて歌らしきものに変化していったと想像される。
生産性が高まり、働かされる人とそれを命令する人が分離してしまうと田植え歌などの労働歌が生まれるが、それはもう少しあとの話。