オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

万城目学「鴨川ホルモー」を読んでみた。

京都という街。観光目的で行くなら、私は明日香や奈良の方へ歩を進めてしまう。姪が住んでいるが、どう考えても夏は暑く、冬は寒そうなので自分が住みたいと思ったことは無い。ただ、大学には惹かれる。学生の頃、演奏旅行という若気の至り的な旅で京都を何度も訪れている。いっしょに演奏会をしてくださったのは、名門京都大学男声合唱団。同合唱団OBの多田武彦氏作曲による「九重に〜」で歌い始める大学歌を何度も拝聴した。そして、何が惹かれると言って、ほとんどフリーに近い底ぬけのリベラルさが京都大学の仲間には感じられた。だいたい、国立大学というのはお堅いイメージがつきまとうけれど、自由な発想お互いに受け入れ、語り合う環境こそ、多くの偉大な科学者が輩出した原因と一人合点していたのだ。

本書の舞台も、京都大学である。内容はアホらしいと蹴飛ばされてしまえば、それっきりになってしまう鬼の話。荒唐無稽、あり得ない・・本書そのものが紙のムダな気がする。けれどそう言いつつ、一応は最後まで読み通してみようかなぁ・・と思ったが最後。結局はそれほど中身のある話ではないので、読者はさらに時間までムダにしてしまうことになる。

作者の陰陽道への興味が、おそらくは本書の材料になっているけれど、それについても作者の作り話の部分が多く、日本古代文化史的な深まりはない。登場人物は、主人公を含め、複雑な内面や奇行が描かれる。その辺りが私が知っている京都大学的な部分かもしれないけれど、現実には「あり得ないっしょ!」でスルーするしかない。
それでもこの物語が受け入れられ続けているのは、現実世界と掛け離れた物語世界で、己のイメージを自由に泳がせたい読者に支持されているからだろう。本書は一瞬の現実逃避を実現させてくれるアイテムなのかもしれない。