オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

獰猛さがゆえの孤独

ふと思い出して、ブラックジャック第7巻「シャチの詩」を読み返していた。獰猛さゆえに漁師たちのお尋ね者のシャチ=トリトンと誰も患者が来ない外科医ブラックジャックの交流を描いた作品は、うっかりすると涙がこぼれそうな位切ない。こういう作品が描ける手塚治虫さん自身が、いろいろな意味で孤独を実感していたのだろう。
シャチは、海の中では食物連鎖の頂点に立つ最強の生物である。その強さ賢さは巨大なクジラや手強そうに見えるサメも敵わない。なぜ神様がこんな強い生き物をお造りになったのかはわからないけれど、天守閣に鯱鉾を飾るように、人々も鯱を崇めてきた。
話は内面に向かうが、自分の心にもシャチは住んでいる。サチオをシャチオと言い換えても良いくらい面倒な存在で、飼いならすことが難しい。付かず離れず付き合えばいいのかもしれない。おのれの獰猛さと孤独感を自覚しながら。