還暦は、やはり人生の節目だと思う。今まで走ってきたギアをシフトしたり方向を変えたり、人それぞれもう一度これからの生活を見つめ直すチャンスである。そのタイミングで学生時代に慣れ親しんだ男声合唱をもう一度歌ってみるというのは、なかなか憎い仕掛けだ。OB合唱団への勧誘という思惑も透けて見えるが、それでも北は青森、西は広島から総勢45人が集まり、男声合唱を楽しんだ。
自分たちの代が当該学年で、準備は1月中旬から始まったので、5ヶ月に及ぶ期間にわたる成果が、発揮されたわけだ。現役当時学生指揮者であった私は、自動的?に指揮者を仰せつかり、音源製作や会場確保、演奏ノートや練習メモの発信を進めてきた。
音取り用の音源は、遠方からの参加者にとって役に立ったようだ。でも今回も感じたことだけれど、音を取って集まり、そこからどんな響きをつくるか?どんな音楽像をイメージするか?それが合唱練習の醍醐味なのだと思う。何もなかった空間にまったく新しい音楽が響きわたる喜びは、本当に音楽を続けていてよかったと感じる瞬間なのだ。
演奏曲はどれも昔取った杵柄で40年前に演奏した曲だけれど、今回その頃の演奏は時効ということにしてもらい、大幅リニューアルした音楽が出来上がったことも嬉しかった。学生時代には、空っぽだった引き出しに、たくさんの経験が詰め込まれ、今回の演奏に反映することができたのだと思う。