名作を読む6
アンデルセン作「即興詩人」を読んでみた。
子ども向けに読みやすく書かれた本を、63歳の私が心を踊らせて読み耽っているのも奇妙な光景かもしれないが、歌で言えば童謡として書かれた曲が、すべての世代の心を揺さぶるように、名作に年齢の垣根はないのだ。
アンデルセンと言えば、言わずと知れた童話作家なのだけど、彼のヒット作第一号が「即興詩人」28歳の時に旅をしたイタリアの美しい風景が作品の中に散りばめられている。日本には、何とあの森鴎外大先生の訳で紹介されている。
私も20代の頃、イタリアをツアーで回ったことがある。青く明るい空、陽気な人々…この国から世界の音楽文化の大きな源流が流れ始めている。だから私たちが今楽しんでいる音楽には、どこかしらイタリアンテイストが漂っているのだ。そう、ドレミファだって、フォルテやピアノだってイタリアの言葉でしょう!
即興詩人は、まるでイタリアを主人公といっしょに旅するように書かれている。物語で語られる詩、流れるオペラアリアに身を浸しつつ、波乱万丈のストーリーを楽しめるのだ。