名作を読む8
狭き門より力を尽くして入れ
作者ジイドが実際のいとこをモデルに書いたと言われる「狭き門」を読んだ。
愛を結婚という形で受け入れようとしないアリサ。その理由がわからないまま苦しむ主人公ジェローム。実はアリサは自分の死がまもなく訪れることを知っていて、結婚を拒んでいたことを、主人公はアリサの死と共にようやく知る。
相手のことを大切に思うからこそ、死期が近い私が結婚してはならないというアリサの思いは、ジェロームにとってはまったくの想定外であり、それが故に葛藤し続ける。アリサの選んだ道・生き方こそが「狭き門」だったのだ。
それにしても「狭き門」への道は、苦しくつらい。ジェロームと今この瞬間幸せでいられることがすべてであって、その先の未来のことを考えても仕方がない。聖書の中に「狭き門」と出てくるらしいのだが、この世の苦しみを一身に背負ってしまったキリストの言葉が実に重々しく伝わる。