オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび36

名作を読む13

ストウ夫人作「アンクル=トムの小屋」を読む。

自由って何か?アメリカは表面的には自由の国ということになっている。しかし、歴史を振り返れば奴隷制度のおかげで豊かになった国だし、今だって移民に対する不当な扱いがまかり通っている。偏見や差別意識との戦いは、これからも長い間続くだろう。人類はちっとも賢くならないのである。

ストーリーは、トムを中心にした出来事とイライザ・ジョージ夫婦を中身に起きた出来事が並行して描かれる。物語の中で聖書を読み、賛美歌を歌う場面が何度も出て来るが、二グロ・スピリチュアルはこのような状況から生まれて、やがてゴスペルミュージックへと変化していくのだろう。本来、神による救済を願う音楽なのだ。

奴隷を売り買いする者が、醜く描かれているのはやむを得ないだろう。しかし自分に鞭打つ残虐非道なリグリイさえも許そうとするトムの心のあり方に、読み手として心底から共感できるか?ここで作者は読者を秤にかけている気がする。

さらには物語の最後に奴隷解放という未来社会への希望を書き込んでいる。多くのアメリカ人がこの本から学び、アメリカの歴史を修正して来た。リンカーンが作者に対して南北戦争の引き金を引いたと挨拶したのは有名な話。

ただストーリーが聖書を下敷きにして、トムが主人に対してあまりにも無抵抗なため、被差別者には受け入れがたい影を現代に落としているのも確かなことだろう。本書は、世界に差別がなくなるまで、これからも読み継がれていくことだろう。