オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび45

名作を読む20

バジョーフ作「石の花」を読む

召使いをすると気が利かない。牛の見張りをすると牛を逃がしてしまう。そんな主人公ダニールシコは、気難し屋で有名な石工のプロコーピイチに預けられる。この親方には今までに何人もの子どもたちが弟子入りしたが、あまりもの厳しさにみんな逃げ帰って来てしまう、まぁいわくつきの職人さんなのだ。今ならあっという間にパワハラで訴えられているだろう。

しかし、何でもマニュアルがあって、すいすいスキルアップできるご時世だけど、それでも年季が入ってナンボの職人技はある。ぼくが琵琶の糸を買いに行く虎ノ門石田琵琶店のおやじさんは人間国宝だ。全然偉ぶるところがないけど、国内では唯一無二の存在なのだろう。

話の筋を追うと、ダニールシコは、石工の才能というか、美しいものを見抜く感性に目覚め、めきめき腕を上げる。そのうち自分の作るものに満足出来なくなる。ある時、年寄りの名人から「石の花」の話を聞き、山の女王に会い、誰も見たことがない石の花を見る。そして結婚を約束した女カーチャを残して、山に入ってしまう。その間に親方は亡くなり、カーチャは死人の花嫁などと呼ばれ、散々な目に遭う。最後には山にダニールシコを探しに来たカーチャと会い、山の女王のもとを去り二人で幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたしという話。

手に職をつけると就職に有利だとか、なにか資格を持ちたいということで、その手の専門学校や通信教育が盛んであるけれど、この石工の話は今の日本で言うと、伝統工芸とか美術の道に通じる気がする。この物語は、どのようなテクニックも極めようとすると、とても奥が深いことを暗示している気がする。