オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび46

名作を読む21

バンバ作「チョンドリーノ」を読む

名作を読んでいると、作者が生きていた時代世相、作者を取り巻いている歴史的な環境が作品に色濃く影を落としていることがわかる。

バンバは、イタリアのトスカーナ州フィレンツェ出身の作家だです。今ととても違うことは、イタリアは一つの国として統一されていなかったのです。これは以前に紹介したクオレの時代背景と同様。オーストリアやフランス、スペインの支配下から独立する時期をバンバも経験しています。この物語の中で、はたらきアリになった主人公ジジーノが、アリ同士の戦争を指揮し、皇帝チョンドリーノを名乗る様子は、ナポレオンさながら。ただ恐ろしいのは、人類史はナポレオンの教訓に懲りず、この後20世紀にヒトラーの登場を許していることです。はたらきアリの皇帝チョンドリーノの支配欲がとどまるところを知らないのも、作者が独裁者に対して、呆れ返っていたことの反証でしょう。

そんな擬人法の面白さもさることながら、作者の昆虫に対する博覧強記には、舌を巻いてしまう。子どもたちは、ストーリーを楽しみながら、昆虫に対する知識を身につけることができる趣向になっているのです。

私の読んでいる全集では、人間に戻ってめでたしめでたしではなく、シャクトリムシになってしまった姉との再会で話が終わっています。チョンドリーノの冒険はこの先どうなるのでしょう?

ちなみにチョンドリーノとは、シャツのはしがズボンからはみ出していたことが、アリになってからも身体の特徴になっているのですね。はたらくのが嫌だから、アリ。算数の幾何が苦手だから、シャクトリムシにしてしまうとは、作者も少々意地悪ですね。