オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび54

名作を読む26

ハート短編集を読む②

・酔っぱらいと女の先生

自分が先生という職業であることを、知られたくない先生は意外と多い。近所のスーパーで野菜を買ったり、バス停でぼーっとバスを待っていても、先生がいることに気づいた子どもは、なんの悪気もなく大声で「先生!」と呼ぶ。周りに人がいれば、こちらを振り向いて『この人、先生なんだ。ふうん』と言った視線を浴びる。かなり恥ずかしい。

それと言うのも先生という職業に、人それぞれの距離感=親近感?を持っているからだろう。40年くらい前までなら、その視線の中に少しは信頼感が含まれていたけれど、30年くらい前から、それはガラガラと崩れ落ちてしまった。それまでふんぞりかえっていたしっぺ返しと言えなくもないけど。例えば、保護者と先生との会話がタメ口になるケースが増えた。これも一括りにダメとか言えない。尊敬する気持ちがあって、初めて敬語が成立するのだから。

この物語の先生も美人だけどツンツンしてるということで、周りから間合いを開けられている。そんな先生がひょんなことから酔っぱらいのサンディと知り合い、さらにはサンディも知らないのだが、教え子トミーの父親であったことがわかっていく話である。

この話の中で、トミーの母親が子どものことを先生に託し、父親がサンディであることも打ち明けるところが、私には嬉しかった。先生にそこまで話してしまえる。でもそれだけ我が子のことを心配していることが伝わるからだ。

ぼくはへそ曲がりなので、教員と先生を使い分けている。辞令をもらって学校で働いているのは、教員。子どもや保護者から信頼された瞬間に、ひょっとすると先生になっているかもしれない。だから誰かにとっての先生になれるかどうか?であって、ただ授業をしているだけでは教員にしか過ぎない。そもそもそれならオンラインでできるじゃないですか!

女の先生は、トミーの母親にとって大切な「先生」になったのです。