オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび57

名作を読む29

中国現代短編集より

魯迅「藤野先生」

魯迅が仙台留学時代の思い出を語る短編。藤野先生は仙台医学専門学校で魯迅を教えた実在の人。当時は日清戦争直後で、日本に中国を見下すような風潮があった。先生はたった一人の中国人留学生である作者に対して、丁寧なノート指導を行う。先生という職業は、教室の中でも追い込まれそうになる生徒への目配りを優先する傾向にあり、藤野先生の心配りも肯ける。

しかし、医学よりも精神文化を建て直すほうが先だと考えた魯迅は、医学専門学校を中退してしまう。お医者さんで、何故か?文学の道を志す人は多い。仙台で医学を学んでいるなら、北杜夫がそうだ。

魯迅は、この後激動の中国に帰り、作家として名を成すと共に、晩年は中国共産党から英雄扱いされる。この短編は、彼の孤独な日本留学時代の思い出として、母国中国に寄せる思いを育んだ時代の記念碑として、魯迅ファンに読み継がれていくことだろう。