名作を読む37
セギュール夫人作「学問のあるロバの話」 を読む。
主人公のロバ、カジションは足が速く、とても賢いのだが、賞賛の声や拍手は、所詮その場限りで、どんなに大活躍したところで、人間のように出世したり、財産を築くことができるわけではない。要領が悪いサラリーマン人生に少し似ている。本編には、ひどく意地悪な飼い主、やさしい飼い主、いろいろな飼い主が登場する。会社の誰かさんになぞらえてもいいだろう。あんまり嫌になった時に、カジションは家をしばしば飛び出してしまう。この辺りが社畜には勇気が必要なところだろう。利口なロバは、やさしくしてくれる人を見分けることができたのよ…という童話ではなく、社畜と会社の間に大切なことは何なのか?を問うている気さえしてくる。
作者セギュール夫人は、元々ロシアの人でお父さんはモスクワの提督だった人。それもナポレオン軍が攻めてきた時にモスクワを焼いた人であります。その後、フランスに来てセギュール夫人となるわけですが、作者ご本人の人生も物語同様波乱万丈だったのだ。