オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび74

名作を読む41

ドーデ作「月曜物語」より

・最後の授業

アメル先生による最後のフランス語の授業。何と翌日からはドイツ語による授業が始まるのだ。

最近では教科書に掲載されていない理由にもなるが、実はこの物語には複雑な背景がある。

元々舞台となったアルザス=ロレーヌは、神聖ローマ帝国の頃からドイツ語圏なのだ。日常語としてフランス語が定着していないから、主人公フランツがフランス語を読み書きできないのだ。とは言えアメル先生のミッションはこの土地にフランス語を広めることにあるわけで、昨日までの国語の授業は、やはりフランス語なのだ。

だからフランス国民としての誇りとか自覚とか、当時のアルザス=ロレーヌの人々にとっては結構ビミョーだったと思われる。

その時代のその国の状況によって教育内容が変化することはよくある。最近の日本でも小学校への英語導入やプログラミング教育があるわけでして。

本来この物語は感極まったアメル先生、フランツがもう少しフランス語を勉強しておけばよかったというクダリから、愛国心を醸成する教育に利用されてきた。そもそもが毎週月曜日に発行される新聞の連載小説で月曜物語なのだから、読者である敗戦国フランスの国民を意識しないわけにはいかないだろう。

世界中が、英語ぐらい話せなくちゃダメじゃん!ムードに包まれている中、また読まれ方がさらに変化してきているのかもしれない。