名作を読む45
ボロンコーワ作「町からきた少女」を読む
ナチスドイツとソ連が戦っていた頃の話。戦災孤児のワーリャがダーシャおばさんに引き取られて、その家で町とは違う生活に戸惑いながら、その家の子どもたちやおじいさんと少しずつ仲良くなり、誰よりもダーシャおばさんに心を開いて、成長していく物語。
戦災孤児が主人公なので、満州に残された残留孤児や戦争中の学童疎開が連想される。けれど生活圏が変わることで、異文化を感じた経験まで範囲を狭めるなら、転校経験がある全ての人に思い当たる部分もあるだろう。
まず、私の住む横浜市は実にあちこちから移り住んできた人々ばかりである。三世代ずっと横浜にいる人は少数派。だからこそどこから来ても熱烈歓迎で、馴染みやすいと思うし、もちろんそれが横浜の活力になっている。
私自身の転校経験は、小学校三年から四年の間て、同じ県内の引っ越しだったけど、それでも言葉遣いの違いや学校の広さなど、いくつか感じたことがあった。
物語からは逸れたけど、少年少女時代に原体験のような記憶が形成される年齢というのが、きっとある。そしてその土地を「ふるさと」と呼ぶのだと思う。ワーリャは、きっとダーシャおばさんのムラがふるさとになるのだろう。