オヤジのあくび

タケさんの気楽に行こうよ道草人生の続編です。

オヤジのあくび84

名作を読む48

ベルネード「海の義賊」を読む。

時はナポレオンの時代。覇権=海上を支配することだった。今ならさしづめサイバー空間を支配することだろうか。その時代の状況がわかっていないと読みにくいが、インドの支配権を巡って、フランスとイギリスが争っている。フランスの義勇海賊シュルクーフは、イギリスの巨大商船ケント号を襲い、勝利する。その時、提督と将軍を捕虜として丁重に遇したことが、その後の伏線となる。ちなみにシュルクーフはサークフで検索をかけると出る実在の人物。

物語を通じてシュルクーフを付け狙っているのが、インド人タゴール。主人公が窮地に陥る際には必ずタゴールの影がある。しかし、彼もシュルクーフとの戦いで父が死んだことに恨みを抱いているのだ。

後半は、イギリスの捕虜となった兄貴分のマルコフを救出するため、ポーツマスやロンドンでの活躍が描かれる。時の英首相ビットやフランスの第一執政官ナポレオンが実名で登場する。その捕虜のやり取りや休戦に関わる外交文書を届ける使者としてシュルクーフが活躍するのだ。

そう言えば、デュマの三銃士でもダルタニャンがロンドンに使者として赴く場面があったっけ。

物語の中でシュルクーフはフランスの英雄扱いだが、数々の戦闘の中には必ず犠牲者があり、タゴールの様に恨みをいだく者も出るだろう。超人的な知力と体力と勇気をもち、自分が信じたことから決して逃げないシュルクーフの生き方は、個人としては立派だと思う。しかし、個人としての生き方とその時国家として何をしていたか?は別問題なのだ。例えばこの物語をインド人側から読めば、フランスもイギリスも巨悪である。すべての英雄物語は、個人としての資質能力を強調して描かれ、子どもたちの心をとらえるけど、もう一つ周りの状況としてどうだったのか?を成長した時に捉え直さないといけない。

それは古今東西を問わない。「坂の上の雲」の秋山兄弟は、軍人としては卓越していたかもしれないが、日本としては当時どのような状況下だったか?そしてロシアとの戦争でどれだけの犠牲が強いられたか?は、また別の視点で捉え直さないといけないのだと思う。